目次
1. 損出しとは
損出しは、含み損を抱えている株を一旦売却して損失を確定させ、その後同じ株を買い戻す行為です。注意点として同日に売買するのではなく、売却した翌日以降に買い戻す必要があります。
目的は年間の株式売買取引にて利益が出ている場合、その利益と損失を相殺することで課税所得を減らすことです。
具体的な例を出すと、今年の特定口座における株式譲渡益や配当金の合計が10,000円で現在特定口座で保有の株の含み損が50,000円とします。
損出ししない場合、利益100,000円に対し20.315%の税金がかかるので、20,315円の税金が引かれることになります。
一方で損出しを行い含み損を損失として確定させると利益から損失が差し引かれます。
つまり、利益100,000円ー損失50,000円=50,000円が課税対象の利益になるので、50,000円に対し20.315%の税金がかかり、10,158円が引かれることになります。
もう少し端的に言うと、節税額=損出し額×20.315%になります。
似たような名前で損切りというものがあります。
損切りと損出しは、どちらも投資における損失を確定させる行為ですが、目的や方法が異なります。
損切りは含み損が拡大する前に売却してポジションを解消することを言います。
目的は株価が下落してこれ以上の損失を避けるために、保有している株を売却して損失を確定させることです。損切りは、損失を最小限に抑えるための防御的な手段です。
損切りも損失を確定させる行為なので結果として損出しと同じように節税効果を得ることができます。
損出しは買い戻しまでを指していますが、節税やリバランスという目的では買い戻しは絶対条件ではないので、ほとんど同じようなものとも言えます。
つまり損出しと損切りの定義は節税的にはあまり気にしなくても大丈夫です。
損出しによるメリットは大まかに以下2つです。
①税金の軽減∶損失を確定させることで、利益と相殺し、課税所得を減らすことができます。
②ポートフォリオの見直し∶損出しを行うことで、ポートフォリオの再構築やリバランスを行う機会となります。
節税のついでにポートフォリオメンテナンスができると思えば年に一度は損出しする意識を持っておくと良いですね。
①再投資のタイミング∶売却後に買い戻す場合翌日以降にする必要があります。これは同日に買い戻しすると売却前の価格と購入時の価格で平均化されてしまい節税効果が半減してしまいます。
そのため日をまたいでの取引が必要となり、買い戻しの際に上昇している場合には、取得単価が高くなる可能性があります。
②取引コスト∶売却や買い戻しに伴う手数料が発生するため、これらのコストを考慮する必要があります。
③NISA口座ではできない∶NISA口座は元々非課税口座であり損益通算ができないため売却しても節税メリットはありません。
①については信用取引を用いた損出しクロスという回避方法もありますが、個人的には日足の株価変動はあまり気にならない、気にしないようにしてます。
②の売却、購入手数料は確かに発生し得ますが、SBI証券や楽天証券であれば売買手数料が無料なのでほとんど気にしなくても大丈夫です。
③はNISA口座の仕様上仕方のない事ですね。
損出しクロスは現物売りと信用買いを組み合わせた損出し方法です。これにより前述の①のデメリットを解消できます。
売却と同時に同銘柄を信用買いし、翌日以降に現引きすると、売却価格と同じ価格で買い戻すことができます。
詳しくは後述します。
2. 損出しの手順
- ①年間取引の損益を確認する
- ②損出し対象の銘柄を選定する
- ③選定した銘柄を売却する
- ④翌日以降に同銘柄を購入する
①まずは利益があるかを確認します。節税効果は利益にかかる税金を軽減することで得られます。逆に言うと、利益がない場合は節税できません。
ただし、その年の利益がない場合でも、損失を3年に渡って繰り越すことは可能です。そのため翌年以降利益が出た時に損益通算すれば節税できます。
②現在含み損になっている銘柄が対象となります。含み損の銘柄の中でも以下の要素で選ぶと良いかと思います。
・今後も長く保有するつもりの優良銘柄
・自分の投資方針から外れており、リバランスしたい銘柄
③選定した銘柄を売却します。売却する量は基本的に全てで良いかと思います。とはいえ一部売却でも問題ありません。
④同じ銘柄を買い戻す場合は翌日以降にします。また、買い戻さなくても売却さえしてしまえば節税効果は得られます。リバランスという意味でも、絶対に買い戻さなければいけないというわけではありません。
また、買い戻す場合はどれだけ買うかは考慮する必要があります。例えば売却と同株数買うのであれば、元々の投資元本より少ない投資額になります。それが嫌で元々の投資額分購入したい場合は、手出し資金が必要になります。
どれだけ買い戻すかはポートフォリオを見直して考えると良いでしょう。
- ①年間取引の損益を確認する
- ②損出し対象の銘柄を選定する
- ③選定した銘柄を売却する
- ④同銘柄を同時に信用買いする
- ⑤翌日以降に信用買いを現引きする
①〜③は同じです。
④は売却と同じ日に同じ銘柄を信用買いします。信用買いであれば、現物を取得したことにならないので取得単価の平均化がされずに済みます。
⑤そして翌日以降に現引きで現物を取得すれば同銘柄を同価格で売却・買い戻しが可能です。
信用取引可能な人は損出しクロスは良い手段かと思います。
3. 実際に損出ししてみた
最後に実際に損出しした結果を上げてみます。
・損出し前
・損出し後
こちらはSBI証券の取引履歴のページになります。
損出しにより損益金額合計が583,412円から521,070円に減っています。つまり損出しで62,342円の損失を確定させました。
一方譲渡益税徴収額合計が118,511円から105,845円に減っています。この差額12,666円分を損出しで節税できたことになります。
たいした手間もなく12,666円が戻って来たので、毎年リバランスの意味も込めて実施すべきですね。
4. まとめ
今回は損出しについての説明と実施例を示しました。
あまり手間も複雑ではないのに節税ができ、さらにポートフォリオの点検・調整もできるので良いこと尽くめかと思います。
年に一度は損出しするようにしましょう。